【日比野優から見た・・・?】

「優! いい加減にしろっ」
 その怒鳴り声から、僕の一日が始った。
 なんだよ、ちょっと眠たかったから二度寝ついでに、三度寝しだだけじゃないか!
 そんなに怒ること無いじゃん!!
 そりゃぁ、起こしてもらっていて、二度寝して起こされての三度寝で怒りたくなるのもわからなくは無いけど。
 何年僕と一緒にいるのさ! たまにはいいじゃんか! たまには!
 直ぐ怒るんだから。
 だから、成君は頭痛もちなんだよ。僕のせいにしてるけど、直ぐに怒るからいけないんだ。
 頭の血管が切れちゃうぞ! うわぁ、僕って優しい。怒鳴られてるのに相手の心配しちゃってさ。
 さっすがぁ〜!! 偉いぞ、優君!
「ん・・・」
 さて、成君の心配してたら眠くなっちゃったぁ・・。
「・・・・・おい!」
「・・・・・・・・・・・・・すぅ・・ぃ」
 おやすぅ、みぃ・・・。 
 って、分かってますよぉ。起きるから、起きてるから、もう一度寝かせてよ。
 今日は寝不足なんだって。なんだって、人の部屋に勝手に入ってくるかなぁ・・・。
 侵入防止用に、僕の部屋の周りの廊下や階段は罠だらけにしといたのにさ。
 これは日に日に性能を増してるんだぞ! 日々精進! 僕って偉いよ、やっぱり。
「・・・・・・やっぱり、ぼくって、・・・・」
 忙しいあいまにがんばってるぅ〜!! あ、でも・・・。おかしいなぁ。
 最近攻略されっぱなしだぞ?! これはいけないね。昨夜考えた新計画だけじゃあ、物足りない。
「寝ぼけるな!」
 ・・・・・・・・・・・・成君、怖い・・・。

 そうやって、僕の朝は始るのである。
 って、こんな始り方の方が少ないんだからね! 本当だよ。いつもは早寝早起きだもん。
 清き尊き存在である僕が、天下無敵な優君が、寝坊の常連な分けない!!
 これでも、内部所属の頃には優等生として噂されるほどの、すっごい良い子だったんだから!
 悪戯っ子に登録されてた成君とは天と地の差だぁ!!
 あぁ・・、如何して身体は動かないんだろう・・・。こんなに思考回路はハッキリしているのに。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ!
 そうに違いない!
 これは、成君の陰謀だ!
 きっと、毒でも盛られて・・・・!?!
 痛いです! 心読まれたかな? そんな感じにドンピシャのタイミング。
 容赦無く、蹴飛ばされたぁ・・・・。
 そうなんだよねぇ、成君との劇的な出会いを話そうとする時「暴力」って単語を省くわけには行かない。
 それほど成君と「暴力」は・・、でも、あの時はまだ、痛かったけど、今よりは痛くなかった気がするな。

 あ、そうそう。
 僕が成君―姶良成樹(あいら しげき)と出会ったのは内部所属の頃。幾つだったけ?
 最初の友達が苛っちー琵李苛(びり いら)で、苛っちの友達だった、のかな?
 よく覚えてないや。
 出会った事実は大切だけど、その経緯をいちいち覚えていなくちゃいけないって事は無いからね。
 面倒だし。
 でも、「暴力」なしでは語れない。苛っちのほうが喧嘩は強いのに、苛っちは滅多に僕を殴らないし蹴らない。
 苛っちは凄いのだ!
 そうだな・・。苛っちが頼れる友達と表現するなら、成君は、遊べる人。だね。
 本当、からかうと面白いんだ!!
 成君や苛っちとは内部所属の班も一緒で、成君とはその後の「関係」も一緒。
 いつも一緒にいるから周りの人は成君のことを僕の子守り役だって言う。
 酷いよね、僕が子守りしてあげてるっているのにさ。
 成君はきっと持病持ちだから、僕が頑張らないといけないんだ。
 持病って言っても発作が起こるとか、命に・・・、ってことではなさそう。多分。
 よく頭が痛くなるとか、言うし、ため息ばかりついてるし・・。って症状だけだから、今のところは。
 きっと精神的に疲れているんだね。何でかは知らないけど。
 心は繊細なのかな? 全然そう見えないけどさぁ。
 

 あ! 肝心なところの説明が抜けてた!!
 ごめんごめん。
 僕は日比野優。
 無限城の住人です。
 無限城、とは、捨てられた子供が育つところ。
 で、育てられた人間が成長して育てる側に回る。
 もっとも、育てる側にまわらずに旅立つ人もいるんだけどね。
 そういう人を、「外を選んだ」って言う。
 だから逆は「残った者」って事になる。僕も残った者さ。
 「無限城の人間」って聞いただけで「外の人」は嫌な顔する人もいるけど、僕は無限城が大好きなんだ。
 だって此処は僕の家だし、此処に住んでいる人はみんな・・・、家族? では無いけど。
 苦手な人とかいるけど、できれば会いたくない人も居るけれど! 仲間って感じかな。
 とにかく大切なんだ。
 何で嫌な顔するんだろうね。
 捨てたのはそっちなのに。自分たちの過ちを直視できないってことかな?
 捨てる理由のひとつとして、一族として認められなかった命とかあるんだよね。正妻じゃない、嫡子じゃない、って奴。
 生まれてきた子供には何の責任も無いのにさ。

 育ててもらっている時は「内部所属」と呼ばれ、育てる側に回る時、「関係」って呼ばれる部署? 見たいなのに分かれる。
 それがまたややこしくて、「外部」「内部」と大きく二つ分かれて、外部はまた二つに分かれる。
 内部? そんなのいくつあるか知らないよ! 僕が知るわけ無いでしょ!
 まぁ、沙羅姐なら分かるかもしれないけど。
 この人は僕の上司に当たるんだよね・・・。あえて言うなら。
 僕の所属する関係は無限城の総総括の雑用って感じだからさ。
 あ!
 沙羅姐―驥足沙羅(きそく さら)。この人が総総括ね!
 で、さっき話題に出た気がするけど、僕と成君は同じ関係所属なのだ。
 苛っちは、内部防衛関係外。ってとこ。
 基本的にほとんど内部で、防衛関係。で、外って言うのは、撃ち合うほうなの! かっこいいよ!
 楽しいしね。防衛関係中って、胃に悪いって、絶対!
 だって、ただ外の人の活動を待ってるだけなんだよ? 事務処理とかしてさ。
 自分の道は自分で切り開かなきゃ! って、僕は思うからかもしれないけど。
 まぁ、中の人がいるから外の人は事務処理とかややこしいことしなくて済むんだろうけどね。

「はぁ? 何もない時、苛は中の仕事してるだろ?」
 僕を起こすことに成功した成君は、何処も嬉しそうではなくて、むしろ疲れきった感じで。
 いつも通りといえばそれまでなんだけど。
 眉を寄せた表情で、僕が防衛関係外は事務処理しなくていいから楽だ! って発言を否定する。
「へぇ?」
 もちろん、そんなこと知らないから。
 僕は変な声を出してしまう。
「今まで知らなかったのかよ」
 呆れ半分お疲れで。此処最近忙しくなかったのに何でかな? と思う。
 僕みたいに夜更かししてて、怒った手前ばれては困るから頑張ってるのかな。
 と、理解しておく。
「だって、シロ、サンは、何もして無いじゃん!」
 シロ。苛っちの同僚。
 危険な事が好きなお兄さん。世話好きなのかもしれないけど、物事の中心にいたがってるって感じがする。
 のけ者にされる事が嫌なのかな?
「なんで、敬称がぎこちないんだ」
 成君って、いつもずれた所が気になるらしい。
 僕もだけど。
 きっと、成君の悪影響だ!
「ん・・・、難しい質問ですね」
 渋面顔で答えてみる。
 ただたんに、本意で無いからぎこちないんだと思う。
 呼び捨てにしたいし、本人もしていいって言ってたんだから。
 でも、苛っちが、呼び捨てにしないほうがいいって言うからしないように頑張ってるだけだよ。
 何でかしらないけど。
「何が難しいんだよ」
 多分、成君は分かってて、無理して言ってるから聞いてくれたんだろうな。
 それともこれは僕の自惚れ? 僕、自惚れてない!
「で、シロサンはなんで何もしてないの? サボり!?」
 サボり。ちょっと楽しくなる言葉だな。
 内部所属卒業後から変なところだけ真面目になってしまった成君はお誘いできないことだけれど。
 ワクワクしてくる。
 自分が参加できないと悔しいんだけどさ。
「さぁ〜。俺が分かるわけないだろ」
 うう、さすが(?)成君。冷たくさらりと流してしまった。
 きっと、僕がサボりたいって思っているって知っての判断だね。
 これが僕に対する虐めじゃなければ、好判断! って褒めてあげるのに。
「で、今度は何処に行く気だ?」
 僕が成君と違う道を進もうとすると、即行腕をつかまれる。
「僕が何時どこに行こうと、それは僕の自由でしょ!」
 ちょっと言ってみる。無駄な抵抗ってなんだけどね。
「沙羅から呼び出しかかってる時に、何処に行くって?」
 成君。今日、やけに怖いよ? 何でだろう・・・。何かばれたかな?
「内部防衛関係最高責任者の兄さんに会いに行こうかな〜って」
 何がばれたか知らないけど。此処で下手に謝ってはいけない。これは経験から来る警告。
 だって、ぼろがでちゃうんだもん。
 だから、満面の笑みで真実を言う。
「・・・・前、苦手だから会いたくないって逃げ回ってたよな」
 うう・・。何でこう、怖く、低い声が出るのだろう。
 僕も声変わりしてはずなんだけど、どちらかといわず、高いよなぁ。
「苦手だけど、避けるともっと後が厄介なの!」
 ”兄さん”
 色々教えてもらってる。憧れちゃうぐらい専門知識が豊富なんだ。
 でも、なんだか、苦手。
 苦手意識持っていることを悟られないために、なるべく会わないようにしてる。
 会わないようにしているんだけど、たまに顔出さないと捜される。
 心配してくれるんだろうけど。ちょっと、これは迷惑なんだ。
 だって、兄さんは動かないんだもん。
 拉致られるんだ。何処で何していようと。強制的に。
 如何して僕が拉致られれしまうのか。
 未だに解明出来ていないんだな。この、天下無敵の優君が、だよ?
 正攻法じゃないんだ。力負けしているわけでもなくて。
 正確には、誰によって兄さんのとこに連れて行かれているの未だに分かってない。
 拉致られ経験一回や二回じゃないのに・・・。
 で、毎度毎度拉致られるのも癪だから、たまには顔を出そうと努力をしているって訳。
 苦手な者の対処法。それは、超ハイテンションで乗り切る。これに限るね。

「沙羅の呼び出し無視するよりもか」
「・・・・」
 痛いところを! 沙羅姐も怖いです。敵に回してはいけない人の一人。
「優がどうなろうと俺は別にかまわないけど・・」
 成君それは酷いよ!
「・・俺に関係ないならほっといてやるよ」
 ほへ? 成君に一体どんな関係があるのでしょうか?
「何故かお前のつけが全部俺のところに回ってくるんだ」
 あ・・、僕が踏み倒している情報関係さんからの、あれとかも、かな。
 てへ。
「請求されて、ちゃんと払ってるの?」
 払ってくれてたら、凄く感謝しちゃう。
 感謝だけだけど。
「何で俺が」
 やっぱり?
「ならなんで、そんな恩着せがましく言うのさ」
 ちょっと、む! 払ってる人の科白じゃん、さっきの言葉は。
「俺に関係ない。なのに如何して優のことになると巻き込まれるのか・・・」
「宿命だね、それは。可愛そうに・・・」
 頼んでないのに周りが巻き込むなんて、本当、哀れな・・・。
 本気で同情中。
「誰のせいだと、思ってるんだ!」
 本日何度目になるか分からない、成君の罵声だった。


 こんな感じで成君との日々は続く。
 如何して一緒にいるかって、楽しいじゃん。
 今が楽しければ楽しいほど先も楽しいって思えるし。
 これでも頼りにしてるんだ。成君のこと。
 一緒にいる理由はそれだけではなくて。「関係」が同じだからって事もあるんだろうけど。
 あと、僕は成君のお守りを自負しているからかな?

 成君って、変なところで真面目で、心配性なんだよね。
 でも、何処か抜けててそれがまた面白い。
 当人はそれを気にして頭痛持ちになっちゃったのかな?
 あれ? でも、抜けてることに気が付いてい無いはずだけど・・。
 どうなってるんだろう???
 違う原因、かな・・・。
 奥が深いや。成君を理解するのは難しい。
 これは誰にでも言えることだけどさ。
 親しい人ほど難しい。
 知らない人にはあまり興味わかないって事もあるのかな?


「沙羅姐も沙羅姐だよなぁ・・・」
 本当、雑用係だ。面倒だなぁ・・・。
 最初は面白そうだと思って、この「関係」を希望したんだけど。
 ま、面白いことは多いよ。でも、面倒な事もある。
 成君は、どうして、此処を選んだんだろう・・・。なんか聞いたことあるんだけど、なんだっけ?
 忘れちゃった!
「優、機密事項だぞ、これでも」
 成君、真面目だ!! 確かにそうだけどさ。
 知れ渡ったら面倒だろうけど。
 情報関係の人の情報操作じゃ手に負えなくなる。
 でも、ばれたらばれたでいいんじゃない? って、思えるんですけど・・・。
 何で内緒なのかな?
「最高責任者たちが決めたから絶対なの? 独裁じゃん」
 ちょっと、嫌だなそういうの。民主主義で行きましょう! って、思うからね。
「実力で最高責任の席に着いた人間たちが話し合いで決めた。その何処が独裁だ?」
 ん・・・、困ったぞ。
「成君」
 これは、超天才の優君と致しましても・・・。
「正論に反論できる分けないの分かって、僕を虐めえるんだね・・」
 僕、落ち込んじゃうな。
 でも、独裁な気がするんだけど・・・。
「正論って言いながらなんで虐めに発展するんだよ、おまえは」
「む・・。日比野優君大打撃を受ける。これって虐めだよ、絶対」
「意味わかんない。万人が納得できる説明をしてくれ」
 何でこれで分からないんだろう、これこそ、万人が納得できる説明じゃんか!
「僕の繊細な心が傷ついた」
「知るか!」
 酷い、成君って、僕を虐めるの趣味? うわぁ・・。今更になって発覚した大問題。
 これから僕、どうやって生きていこう・・・。
 まず苛っちを味方につけて、匿ってもらおうかな。
「でもさ」
「何?」
「実力っても、そう判断したのも最高責任者だよ? みんなが結託してしまうと・・・」
 怖い図式が出来上がっていくなぁ・・・。
 あははははは。
「優、それ、直接言えばいいだろ?」
 っう! 成君、そんな、死刑宣告みたいな発言をさらりと・・・。
 やっぱり、趣味なんだなぁ・・。僕を虐めるの。
「僕に死ねって言ってる。いや、それよりも酷い」
 うう・・・。僕泣いちゃう!!!!
「一生泣きまねでもしてろよ」
「してる」
 ん? 違う・・。
「これ、まねじゃない! 本当に泣いてるの!」
「あっそう」
 あ、疑ってる。
 どうやって信じさせようか。
 泣きまねはちょっと演技力に自身がないな。
 なら!
「うう、この心の傷は早々立ち直れるモノではないよ、きっと」
「医療関係行く?」
 ・・・・・。
「あそこの最高責任者に事の次第を説明して」
 今日の成君。強い。
 僕負けちゃいそう。
 いけない! 清き尊き存在がこんなことで挫けてはいけないのだ。
 全世界の存在する希少価値の清き尊き存在たちの立場が無い!!!
「成君」
「?」
「僕を虐めるとね、虐め過ぎるとね・・・・」
 にんまり笑ってみる
「・・・・・」
 嫌そうだな、成君。
 僕を虐めるからだ!
 此処では、予測できる態度の方が効果抜群。
 嫌なことって当たるともっと嫌じゃん。
「ナルちゃん、って呼んであげる!」
「やっぱりな・・・、優、お前くどい!!」
 うわぁ〜い。
 成君が怒った! やったね!
「こう呼び出したのはシロ、サンだもん! 僕は成君をナルと呼ぶ会を推奨しているだけで」
 このネタ当分使えるね! シロサンありがとう!
 今度あったらお礼を言わないと・・。
「・・・・」
「でも、成君って、如何して嫌なの? ナルちゃん可愛いじゃん!」
「嫌なモノは嫌だ」
 ・・・この態度も可愛い。病み付きになっちゃいそう!
「可愛いのに・・・・ナルって・・」
 僕も何かあだ名がほしいなぁ・・。
「・・・・・」


 成君って変なところでこだわるよな・・。
 成樹の成って字を違う読み方しただけじゃないか。
 カラカイネタが一つでも増えることはいいことだけどさ。
 でも何でこういう事が嫌なのか、突き止めないと。
 次のネタ探しの参考に、ね。


 これが僕たちの日常。





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