004:旅立ち

 

 

 

 別れは唐突で。

旅立ちには別れがつき物だという事が、頭では、理性では理解できていても、感情では分かっていない。

だから、まだ、独りになったという事が、どんなことなのか、分からずに、ただ、希望に胸を膨らませていた。

 扉の番人は、別れる悲しみよりも、旅立つ喜びの表情をした子供たちを幾度と無く見送ってきた。

 ケリー・ライとトリス=影(かげ)。

 この二人も、例外ではなった。先に旅立つことになった少女は、友人のことを心配しながらも、できると信じ、自らのことに目をむけ旅立った。

そして、少年は、友人のあとを追うように、けれど違う道を歩み始めた。

 

 彼らは外を選んだ者。無限城を出て、自らを捨てた世界への挑戦者たち。

 これからどんな人生を送るのか。

 それは、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 “自分のきめたことに責任を持つ”

 そう言葉を貰い、新たに心を決め、旅立った少年がいた。

外見年齢、一三、十四歳。元内部所属D。

仲が良かった友人グループの中では、最年少に当たる。

もっとも、最年長でも十五、十六歳であるから、結局は同年代扱いされていた。

最年長に当たる少女も旅立った。一つか二つ上の少年はまだ、決めていない。だから、まだ、無限城にいる。

旅立つための決意を新たに与えてくれた言葉。それをくれた人は、自分と同じ年のころには既に残る道を決めていたという。

自分の旅立ちが早いのか遅いのか。それはわからない。それはこれから考えよう。と、少年は、トリス=影は思った。

 

 ふと考えて、笑った。

置いていかれたとすねるだろうか? 一人だけ仲間はずれだと・・。

予想すると、それだけで笑みがこぼれたのだ。

実際、その場面に立ち会わないからこそ楽しいのだが。

大丈夫だ。ケリアスなら、あいつなら、やれる。

グダグダする時期もあるだろうし、・・・周りにはずいぶんと迷惑な行動をとるかもしれない。

いや、おそらくはとるだろう。

けれど。

けれど、絶対に。

大丈夫だ。そうであることを知っているから。

 

 ケリーは、どうかな。

 再開の約束はした。

 でも、何時、何処で、なんて、してないから・・。

 

 いつか会おう!

 

 いつかって、何時だろうな。

 ケリーも大丈夫だ! 絶対に。

 だって、トトの質問に即答できたじゃないか!!

 だから、旅立てたんだ。

 

 トリスは立ち止まると、膝に手をついて頭を振った。

「駄目だ、駄目だ、駄目だっ!」

 自分は何を考えているんだ。

 今は自分のことを考えよう。今更二人のことを考えたって、どうにもならないだろ・・。

 

 

 

 そして、歩き出した。

 自分の道を探すように。

 

 

 

 

 

     ×   ×  × ×  ×   ×

 

「苛っち。言わないで」

だから、日比野優(ひびの ゆう)は先手を打った。そして、苛(びり いら)は、確信した。

その勘が当たったことを。けれど、苛は、次に優の言葉に笑みをこぼした。

「言わないで、欲しい。なって、欲しくないから・・・・。」

ポン、ポンと、優の頭を叩く。

「?」

何をしているんだ? といった感想を顔に出したまま、優、苛を見る。

「優しくなったな」

苛は、懐かしさをこめて、笑い、そして、歩き出した。

 その、不吉な予感が当たったことを知るのは、すべてが終わったあとだった。

 この時、何も忠告できなかった自分を、自分たちを、彼等は後悔したのであろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          END

 

 

   難しい。

   久々の更新!

   って、順番抜かしてできているのもあるんですよ・・。

   早く書き上げないとなぁ。

 

 

 

 

   第五話「謎」 お待ちください。

 

 

          平成十八年後月十九日月曜

 

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